無題

この曲は、梶浦緋紗子先生が学生時代に想いを寄せていた、長谷川詩織の作った曲です。第二音楽室での二人の出会いのきっかけにもなりました。その後の経緯を考えれば、恐らく「遺作」に当たるのではないかと思われます。緋紗子先生は、この曲が大変気に入っていたようです。

この曲がなぜ、CDやおまけに収録されていないのかは、私にはわかりません。キャラクターのそうした事情を踏まえ、あえて未収録としているのかも知れません。作曲者自身の思い入れもあるのかも知れませんね。死んでしまった人の曲ということで、何らかの問題があったのかも知れません。でも私としては、収録されていない状況に、耐え難い思いがしました。ゲーム中の話ですが、詩織の曲は、もう二度と生まれる事はありません。そんな詩織も、このゲームも、その音楽もまた、時間と共に、人々の記憶から遠ざかっていきます。詩織の弾いていた曲を、誰かが留めておかなければ…。このままでは、誰も残すことなく消えていく……。そんな気がして、涙が止まらなかったのです。

こういうやり方は、正しい方法ではないかも知れません。でも、私は形にしたかったのです。この曲を残しておきたかったのです。

そんな思いに後押しされて、この曲を打ち込んでみました。拙い作品ですが、詩織に対して同じ思いを抱く方々の、何らかの心の糧になれば、それに勝る幸せはありません。

岐神葵