KunadonicSkate
■IceSkate アイススケート初心者篇

 アイススケートの練習方法について、思うところをつれづれなるままに語って参ります。基本的な練習や、間違った解釈、初心者が陥りやすい間違いなど、他所ではあまり語られない点を追求してみます。もちろん、私の解釈が正解というものでもありませんし、間違いもあります。また、他の方や他のやり方、解釈を否定するものでもありません。一つの解釈と受け取っていただければと、考えています。こんな独善的な解釈がお読みの皆様にとって、何らかの一助になれば、これに勝る幸せはありません。

■滑る前に

服装 ~意外と知られていないスケートに最適な格好

 寒さに備えて、スキーのような重装備でリンクに来る方もいますが、屋内リンクの温度は冬の昼間の外気温程度です。場合によっては、外よりリンクのほうが暖かいくらいです。屋外のリンクの場合は当然、外気温です。屋内のリンクより確実に寒いです。それでもスキー装備は不要。速度もそれ程出ませんし、体が雪まみれになることもありません。スケートはかなり体力を使うスポーツですので、滑り続けていれば体がかなり温まります。真冬のジョギング感覚が、丁度良い服装となります。但し、3~5歳前後のお子様の場合は、転ぶ可能性が極めて高いので、例外的に防水性の高いスキー装備が望ましいです。年配の方は逆に、恐怖心から転ぶ可能性の高い動作は、ほとんどしないものです。

 温度調節をしやすいように、フルジップで長袖の上着を着ましょう。滑り始めは良くても、真剣に練習を始めると暑くなるかも知れません。脱ぐほどではなくても、休憩時に前を開けておけば、暑さも和らぎます。但し、滑走時はジッパーを締めて下さい。裾がはだけると、滑走時に邪魔になります。もちろん、汗をかくようなら、脱いだほうが賢明です。いずれにしても、温度調節しやすい上着は、必須と言っても過言ではありません。あまり滑れない人は、体が中々温まらないので、少し厚手の上着がいいです。丈長のコートなどは足にまとわり付いて、転びやすいですので避けてください。上着の中は、普段通りで構いません。

コラム ~プレーンスケーティング~

 プレーンスケーティングという言葉があります。一般の方には馴染みがないと思いますが、スケートには例えばアイススケート以外にも、ローラースケートがありますし、アイススケートもホッケーやフィギュア、スピードスケートなどに分類する事が出来ます。

 それらの「スケート」で共通する、基礎の滑走に当たるのが、プレーンスケーティングです。つまり、氷の上に立って最初に覚える基本滑走とも、言い変えることが出来ます。この滑りを覚えておけば、後に専門的なスケートに移行しても、スムーズに練習することが出来ます。この基本滑走は、どこのスケートリンクでも実施しているスケート教室で、手軽に習得できます。一日教室とか、短期間の指導であれば、大抵この基本滑走をベースに指導しています。

 今の所フィギュアかホッケーか決まっていないという方や、とりあえず滑れるようになりたいという方は、まずプレーンスケーティングを覚えることになります。このサイトで紹介している滑り方の、初級段階までが、その滑りに相当します。

 ボトムは動きやすい服装で。ロングスカートは初心者は避けた方がいいです。スカートの場合は、タイトなものは絶対ダメ。ミニスカートならタイツかレギンス(スパッツ)を履きましょう。ジーンズは、足の自由を奪うようなタイトなスリムジーンズは避けましょう。とにかく、足の自由度が大切です。転ぶつもりで練習するなら、ジャージやスウェットスーツ、チノパン、カーゴパンツ等がいいです。ショートパンツはとても動きやすく、練習用スカートに匹敵するほど、意外と向いています。但し、肌をなるべく露出しないよう、ハイソックス、できればニーソックスやタイツを履きましょう。

 靴下は、貸し靴の場合クッションがほとんどありませんので、多少厚手の靴下がよいかも知れません。靴擦れ防止、豆防止には、厚手の靴下がよいです。

 参考までに、慣れた人の場合は、ボトムはスウェットスーツかジャージ、本格的な人なら練習用スカート。防寒用にタイツを履きます。靴下を履く場合は、ナイロンの薄手のもの。マイシューでも良い物となれば、綿入りでクッションが効いています。上着はフリースや薄手のジャケットにTシャツです。相当練習すれば、真冬でも汗だくになります。Tシャツで練習している人も、珍しくありません。

 最後に、手袋をお忘れなく。一般リンクでは、手袋の着用が必須です。それから、転ぶ可能性の高い初心者でしたら、頭を守るために毛糸の帽子などを被るといいです。金属製のヘアアクセサリーはやめましょう。転んだ際に頭に刺さると、命に関わります。慣れた人は、後でお団子を作ってまとめたり、ポニーテールにしています。理由は、転んだ際にクッションになるからです。

靴紐の結び方 ~全てはここから始まる

 リンクに立つ前に靴紐を結びますが、ここからの指南が絶対必要だと日頃感じています。というのも、靴紐の結び方ひとつで、その日の滑りが「楽しかった」になるのか「疲れた」「痛い」になるのか、大きな差が生じるからです。慣れていれば、どう結べばいいのか分かりますが、それを初心者は全く知りません。是非、正しい結び方を覚えて、リンクに向かうようにしましょう。

 右の写真をご覧下さい。
 靴紐の締め方の説明ですが、つま先部分はある程度、指が動く程度の余裕が必要です。指が奥に当たるようだと、踏ん張りが利きません。かといって、隙間が大きすぎるのも困ります。紐を締め、かかとをぴったりと後ろにつけた状態で、足が前に滑り出さない程度が理想です。この加減は難しいかも知れませんが、普段履きなれた靴のサイズが一番フィットするはずです。基本的に、貸し靴のサイズと普段履いている靴のサイズは同じで構いません。きつい・ゆるいといった場合にのみ、サイズを調整する方が無難です。但し、リンクによっては「普段の靴より1cm大き目」などの指示がある場合があります。その場合は、指示に従ってください。貸し靴によっては、サイズに微妙な誤差があるからです。

 靴紐はくるぶし部分を最も強く締めます。ここがゆるいと、足が靴の中で遊んでしまいます。通常は、この部分まで紐が穴に通してあります。足の甲の部分を、指先側から段々ときつくしていき、最後の穴の部分で一番強くなるように、締めていきます。

 くるぶしからすねにかけては、ある程度の余裕が必要です。足首が前後に動かないと、重心の前後移動が出来ないからです。くるぶしから上は、紐が穴ではなく、フック(ホック)になっています。フックへの紐のかけ方にも特徴があります。ここは初心者の皆さんが必ず間違う部分ですので、注意してください。紐をフックの下から回すのではなく、上からかけるのが正しいかけ方です。

 写真をご覧下さい。矢印の通り、紐を上から下に回して引っ掛けていくのが、正しいやり方です。この引っ掛け方なら、すねの部分に指一本分の余裕があっても紐が緩みません。紐自体がゴムのように、伸び縮みしやすくなり、足首が自由になります。この足首の自由度がないと、体を前傾姿勢にするのが難しくなります。前傾姿勢が出来ないと、後に転びやすくなります。

 初心者が前傾姿勢を取れない最大の理由が、この結び方にあります。これが、結果として「楽しい」にならず、「疲れた」「痛い」になってしまう、原因なのです。
 尚、指一本分の余裕と書きましたが、この余裕には、慣れた人でもかなり個人差があります。目安を記すのが難しいので、初心者でしたら「スケートを履いた状態でひざを曲げて、屈伸運動(ひざの曲げ伸ばし)が出来る程度」が望ましいと考えています。このくらいの余裕があれば、問題なく前傾姿勢になることが出来ます。

■滑り方の基本練習

歩き方 ~ひざの使い方を覚える

 まず最初に、氷に立つことが初めてとか、ほとんど滑ったことがないという方向けの、練習方法の指南です。

 一般的には、まず氷の上を、スケート靴で歩く事から練習します。ペンギン立ちになり、つま先を60~90度程度、V字型(逆ハの字型)に開きます。逆ハの字という言葉は、教室や教本などで頻繁に使われる言葉です。私的な表現は、V字です。逆ハの字は、年配の方にも分かりやすいという意図かも知れません。この姿勢からペンギン歩きをします。

 滑る場合は「軸足」「蹴り足」という表現をします。これも色々な表現があります。歩く場合はちょっと異なりますので、「前足」「後足」という単語で表現します。
 前足は、持ち上げたら後足の土踏まずの辺りに、かかとをくっつけるようにして置きます。Vの字立ちから、yの字になるイメージです。反対の足も、同じように出します。その繰り返しです。手は、ペンギンのように(中高年でしたら、ドリフのひげダンスのように、でお分かり頂けるかと思います)手を腰の辺りに添えます。ここでの注意点は、手を絶対に後に振らないことです。体より前に出す分には、比較的転びにくいですが、後ろに手を振ると後方に転倒する危険性が高いです。同じ理由で、あごを上げたり、仰け反ったり、上を向いたりはしないほうがいいです。

 重要なのは、ひざのバネを使うということです。このひざのバネは、次に覚える「滑走」以後、全ての滑りに必要な要素です。ひざを少し曲げて、ちょっと腰を落として歩くという感じが理想です。

 歩く事は、基本でも何でもありません。氷という異世界に慣れるための、第一歩に過ぎません。転びやすい事が分かっているなら、わざわざ練習する必要性はありません。何故って、あなたは、滑るためにスケートシューズを履いているのですから。これは、あくまで子供や氷の上が初めての大人に、氷上という別世界を理解させるための、練習なのです。

滑り方 ~歩くのとは根本的に違う事を理解する

 さあ、早速滑ってみましょう。といっても、怖がる事はありません。いきなり片足で滑れと言うつもりもありませんし、バックなんて出来っこありません。前にツーっと滑るだけです。スケートの基本はここからです。

 いきなりですが、地面の上を歩く感覚で滑れると思ったら、大間違いです。歩くのと滑るのとは、歩きか自転車かというくらい、違います。自転車に乗るためには、練習が必要です。滑るためにも、練習が不可欠です。オリンピックのメダリストも、ここが出発点です。

 まず、簡単な「滑り方」として、先の「氷上歩行」の歩幅を、少しずつ広くしていく方法があります。歩幅を広くしていくと、体重がどんどん前の方に移動していきます。すると、スケート靴は自然に、氷の上を前へ前へと滑り出します。生まれて初めて「氷上を滑る」瞬間かも知れませんね。段々慣れてくると、スピードを乗せるために、蹴り足に力を入れるようになります。

 とりあえず、つま先についているギザギザを使って、蹴って前に進んでいると思います。が、念のため申し上げておきます。この蹴り方は大間違いです。俗に「トゥ蹴り」と呼ばれます。ギザギザは正しくは「トゥピック」と呼び、実はジャンプをするためについています。ジャンプ以外の使い道は、ほとんどありません(バックからのブレーキに使えたりもしますが、これも正しい方法ではありません)。余談ですが、トゥピックはバレエの技を取り入れるために付けられたと、考えられています。バレエでは、つま先立ちになって色々な技を繰り出します。とにかく、このトゥピックで蹴って進まないようにしましょう。

 では、どうやって蹴るのか? 蹴り足はエッジを使って氷を押します。エッジ?なんて何が何だか分からない方ばかりでしょう。トゥで蹴って前進する方法は、真っ直ぐ進むには問題ありませんが、曲がるのが困難なのです。えっ? 足を踏み変えて曲がれば良いんじゃないの? それでも曲がれないことは無いですが、…曲がり方については、後で詳しく説明します。ここでは、とにかく滑り方を覚えましょう。先程のyの字の歩き方から滑ったとしたら、後足は、斜めに向いているはずです。そのまま、スケートの刃の側面で押すようにすれば、しっかりと前に押し出すことが出来ます。これが、本来の蹴り方です。

 ペンギン歩きの発展型が、滑りすなわち「滑走」だと申し上げました。もう少し、詳しく説明しますと、軸足(前足)は体重が乗っていないと、前に進みません。ここで問題になるのは、軸足にどうやって体重を乗せるか、です。
 歩く時と根本的に違うのは、スケートの刃がものすごく不安定な状態にあるということです。実際に氷の上に、スケート靴で立ったことのある方なら、お分かりかと思います。 自転車どころの話ではありません。喩えるなら、一輪車です。しかも、氷の上で、つるつる滑る、鉄の板です。さあ大変。と、怖がっていても先へは進めません。安定するように、しっかり第一歩を踏み出しましょう。そのコツは、簡単に言うなら「ナンバ歩き」です。下の図をご覧下さい。

 昔なつかしの、飛脚マークです。この手と足にご注目。手と足が、一緒に前に出ています。これが、いわゆるナンバ歩きです(今では佐川急便もマークが変わり、ナンバではなくなりました)。

 ナンバ歩きとは、右手と右足、左手と左足が一緒に前に出る、歩き方です。江戸時代以前の、日本人の歩き方です。これと同じスタイルで、V字立ちから、足を前に踏み出してみましょう。右足を前に出す時に、右手を前に出すように、ナンバ歩きで前に踏み出します。すると…。スムーズに右足が前に滑り出します! 体重がしっかり右足に乗っているからです。同時に、蹴り足がトゥ蹴りにならず、ブレード全体で自然に蹴る事が出来ます。そのまま軸足を保つのは、初心者ですと難しいので、すぐに蹴り足を軸足に添えて、両足を平行にします。前進力が付いていれば、両足立ちになっても、そのまま前に進んでいきます。速度が遅くなったら、また蹴れば前に進みます。この繰り返しです。

 ここまで来て重要になるのは、歩き方で覚えた「ひざのバネ」です。ひざが軽く曲がった状態でナンバを踏み込めば、蹴り足を上手く使うことが出来ます。後に「蹴る」ためには、ひざが曲がっていることが必要です。その曲がったひざを伸ばす動作こそ、蹴る動作なのです。以後、バックやジャンプなど全ての滑りで、ひざのバネが必要です。

  片足立ちで滑れることが理想ですが、片足滑走はバックを覚えるのと同じくらい難しいです。まず、両足を平行に保って、しっかり前進することに集中しましょう。

 このナンバによる滑り方を覚えると、大抵はジグザグ滑走になります。y字の状態から半身に乗り込んで行く形になり、どうしても右へ、左へと斜めに進んでしまうからです。リンクで禁止されているジグザグ滑走とは、この滑り方です。混んでいるリンクでは、どこに進んで行くのかわからず、他の人とぶつかる可能性が高いため、危険です。きちんと真っ直ぐ進むために、蹴った後は必ず両足を揃えましょう。両足を揃えることで、真っ直ぐに進むことができます。

 ちなみに、このナンバによる左右の体重移動で滑走することを、専門的には「自然滑走」と呼びます。上半身を振り子のように、左右に体重移動させながら滑走する、最も楽な自然体の滑走方法となります。

曲がり方 ~蹴って曲がるのではなく、刃を傾けて曲がる

 どうやって曲がるかというと、スケートの刃(以下ブレード)につけられているカーブに乗せて、曲がって行きます。もっと分かりやすく言うなら、ブレードを寝かせることによって、真っ直ぐだった刃が弓なりに、氷に触れるようになります。ブレードが右に倒れれば、右に曲がるカーブに、左に倒れれば左曲がりのカーブになります。これが、エッジワークと呼ばれるものです。エッジとは、スキーなどとも共通しますが、刃の角に相当する部分です(ブレード自体をエッジと称する事もあります=これは、ホッケー用具には別の「ブレード」があり、混同するからとも言われています)。

 ブレードは、金属板で出来ています。厚さはフィギュアの場合、4mm程度です。氷と接する4mm幅の面には、溝が掘られています。溝が掘られている事により、垂直立ちですと、二本の刃が氷と接している状態になります。下の図をご覧下さい。

エッジを前から見た図

 丸く掘られた溝により、本来直角になる左右の角が、鋭くなっています。これが、エッジです。見ての通り、左右の面にそれぞれ、エッジがあります。両足の内側となるエッジをインエッジと呼び、両足の外側にくるエッジをアウトエッジと呼びます。ブレードに付けられたカーブにより、そのエッジの方向にゆるやかに曲がって行くことが出来ます。右の図は、片方のエッジに乗った状態です。右側のエッジに乗っていますので、このまま進めば右の方向にゆっくり曲がっていきます。これが、エッジワークと呼ばれる、フィギュアスケートやホッケーなどでの、曲がり方の基本です。
  ちなみに、スピードスケートでは、カーブでクロッシング(千鳥足)と呼ばれる蹴り方でスピードをつけながら滑っていきます。そもそも自由に曲がる必要が無いスケートで、スケートにつけられたカーブも、トラックの曲線にあわせたカーブになっています(完全に真っ直ぐなエッジになっているわけではありません)。なので、スピードスケートはフィギュアやホッケーのように、エッジのカーブを使って曲がるのは多少難しいです。ショートトラック用などは比較的カーブがきついので曲がりやすいですが、それでもフィギュアやホッケーのようにクネクネとは曲がれません。

 このエッジワークは、片足滑走になると絶対的な要素ですが、概念だけでも両足滑走の段階で覚えておく事をお奨めします。アウトエッジを使うのは、最初は恐らく全く出来ないでしょう。アウトエッジにしっかり乗るというのは、片足滑走がしっかり出来てから、その次の段階の話ですから、無理もありません。でも、両足滑走でもエッジを使ってカーブを曲がって行くというのは、実は難しくありません。要するに、両足を平行にして、傾けて滑ればいいのです。その滑り方には、いくつかあります。

 足が平行のままでは、刃を傾けるのは困難です。刃を傾けて、旋回方向に角度をつけるためには、両足の位置をずらして体を傾けるようにします。下の図をご覧下さい。

 平行状態の足を、図のように進行方向に向くように、平行にスライドさせます。この図の場合、左方向への旋回になりますが、左足のつま先を左側に、右足のかかとを右側にずらします。その際、左足を若干前に、右足を後ろに引くような感じにすると、さらにやりやすくなります。上半身を、自転車でカーブを曲がる時のように、カーブの内側に体を倒すと、ぐいぐいと曲がっていけます。

 この曲がり方の最終形が、キャーリングと呼ばれる曲がり方になります。ずらした両足をほぼ一直線に並ぶ形にまで持っていくと、丁度自転車の前輪と後輪の関係と同じになります。前になった足を、ハンドルを曲げて角度をつけるような形にすることで、極めて小さい円を描いて曲がることが可能になります。これは、ホッケーでの基本動作であると同時に、プレーンスケーティングの必須要素でもあります。

 初心者ですと、キャーリングの状態まで持っていくことは難しいでしょう。でも、足をずらして曲がっていくことは難しくありません。特に名称などはありませんけど、私はこのずらすだけのターンを「スラストターン」などと呼んでいます。インラインスケートのAターンに近いかも知れません。このスラストターンの際に、両足のエッジを意識してみて下さい。曲がりたい側のエッジに乗る、つまりブレードに角度をつけるように、体をカーブの内側にほんの少し傾けてみて下さい。誰でも簡単に、曲がれるはずです。

止まり方 ~後にも先にもTストップが一番使える?

 滑るのは何とかなっても、「止まれない」としたら危険です。ブレーキが出来ない為にスピードが出せないという人も、多いですね。氷上でのブレーキは、その感覚がなかなか掴みにくいので、覚えにくい側面もあります。

 ブレーキの方法は、かなりの種類があります。ざっと上げると、「イの字型」「ハの字型」「T字型」「逆T字型」「二の字型」など、そのバリエーションは多様です。文字通り、停止時の足の形をそのまま表現していますので、やり方そのものはすぐにお分かりいただけると思いますが、それをきちんとしたブレーキに持っていくのは、ちょっと難しいかも知れません。基本的にアイススケートでのブレーキングは、氷を削ることによって止まります。氷を削るというと、何だか凄そうなイメージですが、実際にリンクに行けば、ホッケーの方たちが凄い音を立ててブレーキを掛けている光景を目にします。

 相手が鉄の刃ですから、氷は意外と簡単に削れます。ただその為には、加重をしっかりとエッジにかけることが必要です。まずは、ブレーキの形をしっかりと覚えることが重要です。

●イの字型
 軸足の前に斜めに足を出して、インエッジで氷を削ります。片足のブレーキで比較的やりやすいですが、速度が出ていると重心がずれやすいブレーキです。初心者向けで、最終的には使いにくくなるブレーキ方法です。
●ハの字型
 イの字を両足で行うと考えると、分かりやすいです。速度が付いていても、両足で止まる為比較的安定しています。但し、氷の面に対して斜めに削る為、ブレーキ力はそれほどではありません。急停止は出来ませんので、これも最終的には使いにくいブレーキになります。通常の減速には、両足立ちからすぐに使えるので、何かと使えるブレーキです。
●T字型
 イの字に近いですが、イの字のつま先を出すのとは逆に、かかとを出してTの字を作ります。「ダンスストップ」とも呼ばれます。ブレーキを掛けるエッジが、アウトエッジになります。進行方向90度でアウトエッジでブレーキをかけるというのが、最もパワーのあるブレーキングです。このT字型は、ブレーキ力がかなり強いので上級者向きです。また、T字を組む際にかかとを前に持っていくのが、怖いという人も多いです。実際、ブレーキに失敗すると、転びやすいブレーキングでもあります。そういう意味では、初心者向けではありません。次に紹介する「逆T字型」のほうが、失敗しても転びにくいです。
●逆T字型
 軸足の前でT字を作るのではなく、かかと側でT字を作ります。他所ではこのブレーキングを「フィギュアストップ」と呼ぶ人もいますし、こちらの形を「T字型」としている場合もあります。
 
初心者でもやりやすく、アウトエッジを使わずインエッジで雪をかく「スノープロウ」という初歩的なブレーキングも同じ逆T字ブレーキで行います。スノープロウから練習を始めて、慣れてくるに従いアウトエッジを使うブレーキングに変えていきます。インラインスケートでも「Tストップ」と呼ばれ、このブレーキ方法が好まれます(氷上ではないのでアウトエッジは使いません)。アウトエッジを使えば高速からでも強力なブレーキがかけられますので、上級者でも重宝します。私はこのブレーキングをまずお勧めします。何より、他のスケートでも使えるというのは魅力です。
●二の字型
 両足でかけるブレーキングですが、進行方向90度でのエッジブレーキがさらに両足となる、事実上最強のブレーキです。フィギュアでは出来ないと思われている方も多いようですけど、不可能ではありません。ホッケーで多用される事から「ホッケーストップ」とも呼ばれます。
 フィギュアでこのブレーキをかける場合、上半身をひねる必要があります。両足が同時に向きを変えるためには、ターンに近い動作が必要となります。この動作が苦手なら、イの字もしくは逆T字からニの字に踏み変えるという、二段階ブレーキにするという練習方法もあります。イの字・逆T字の軸足を、ブレーキ足と平行になるように踏み変えるだけです。これなら、ひねりの動作が必要ないので、初心者でもニの字を作りやすいかと思います。
 最強のブレーキではありますが、フィギュアでこれを使わないと…という場面はまずありません。ホッケーでは必須と言ってもいいブレーキですけど、ターンが出来れば誰でも出来ますので、無理して覚えなくても構いません。ただこの二の字型が最強だという事は、覚えておきましょう。

 以上、各種のブレーキを説明してみましたが、やっぱりお勧めは「逆T字」でしょう。初心者にも覚えやすく、どんな速度でもしっかり効きますし、ホッケーやインラインなどでも同様のブレーキが使えて、応用が可能です。ブレーキはとっさの動作となるものですし、感覚的にすぐ出来ないと困ります。まず最初は、自分が一番やりやすいと思ったものを、とにかく早くかけられるように、練習してみてください。強さや安定性よりも、結局はその速さこそ要です。もたもたするようでは、ぶつかってしまいます。すぐにかけられるブレーキこそ、最強のブレーキになるはずです。

 ブレーキング・ストップを習得すると、水を得た魚のように、スピードが出せるようになります。速度に対する恐怖心が激減するからです。しっかりとしたブレーキングは、上達する上で欠かせません。言い換えれば、ブレーキに不安のある人は、いつまでたっても怖くてスピードが出せません。ブレーキを覚えるという事は、安心して速度を出すためには、欠かせないのです。

 ちなみに、技としては「○○ストップ」と呼ぶのが通例です。あくまで強制的に止まる為の技だということです。止まる為以外の何物でもなく、ゆるやかに減速する場合は、足技をうまく使いながら速度を落とします。例えば、ひょうたんを書くとか、キャーリングでSの字を書くとかすれば、速度は自然に落ちるのです。フィギュアではブレーキは乱用するものではなく、本当に止まりたい時のみに使えば充分です。ホッケーは急峻な動作を求められます。全速から一瞬で停止し、別方向に駆け出すなど、ストップはバック以上に必須となります。それでも、可能なら止まるよりは動き続ける方が有利です。初歩の段階では使用頻度が高いかも知れませんが、慣れるに従いほとんどやらなくなるのが、ストップ技です(苦笑)。

初級者篇に向けて

 さて、ここまで無事に覚えることが出来たなら、「滑る・曲がる・止まる」というスケートの基本動作が出来ている事になります。この3つの動作が出来て初めて、スケートの楽しさに触れることが出来るのですが、いかがでしょうか? 日常の歩く~走る動作とは全く異なる、まるで超能力かサイボーグか、そんな特殊な能力に近い「滑走」の世界を味わっておられる事でしょう。ハリウッド映画に出てくる超人が身に付けた、高速移動する能力に近い、そんな感覚を私は持っています。慣れてくるに従い、蹴る動作をほとんどすることなく、直立姿勢のまま高速移動が出来るわけです。この非日常的な感覚は、他のスポーツでもなかなか味わえるものではありません。スケートはまさに「滑れるようになった人だけが味わえる、特殊能力」です。

 さらに、バックやターンが出来るようになると、その特殊能力はさらにパワーアップします。まるでマトリックスのような、そんな感覚です。バックは難しいと思われる方も多いでしょうが、実は意外と覚えられるものです。泳ぎでいうなら、背泳ぎか平泳ぎ程度のものです。バタフライほど難しくはありません。1回で覚えるのは困難ですが、週に1回通うなら、遅い人でも1ヶ月で出来るようになります。是非、バックを覚えてみて下さい。

 単に滑るだけなら、ここでおしまいです。でも、せっかく滑る楽しさがわかってきたなら、遊びがてらにバックの練習をされてみる事をお奨めします。その滑り方は、この続き「アイススケート初級者篇」で詳しく解説致します。

つづく  24/02/01 15:59 更新  >>>アイススケート初級者篇

KunadonicSkateトップ

鍵の救急車 橋本シルク工芸
カギの救急車のクレームがひどすぎる