Kunadonic ロリータファッション徒然草

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ロリィタファッションとカントリー

 
 

 PINK HOUSEはカントリースタイルであってロリィタファッションではない、というのは常識ですが、この違いは一般の方々にはほとんど浸透していないのが現実です。かわいいフリフリの服という点では、一緒くたにされるのは仕方ないかも知れません。特にバブル時期を知る世代の女性にとって、PINK HOUSEは強烈なブランドでしたし、当時のステータスでもありました。全部揃えると20万円を超えるのは当たり前で、あの時代にコーディネートできたならそれは、まさにセレブでしたから。

 かく言う私も憧れました(歳がばれますわね)。でも若かったし多少人より稼いでいたとしても、数着買うのがやっとでした。それでも嬉しかったですね。懐かしい思い出です。

 その流れにあって、個人的にはカントリースタイルも大好きでよく着ています。カントリースタイルというファッションは、私が仮にそう呼んでいるだけで、これも実は明確な定義があるわけではありませんね。わかりやすく言うなら、「赤毛のアン」や「大草原の小さな家」の、アメリカ西部開拓時代を思わせるスタイルですね。開拓時代といっても、ジーンズはまだ男性の作業着で女性は絶対に着ません。ジーンズを女性が履くようになるのは、ベトナム反戦運動の頃からです。

 2000年代後半頃に流行った「森ガール」は、カントリースタイルのムーブメントだったかと思います。PINK HOUSEの華美な装飾とは対極的な、アースカラーとゆるめのデザインでしたけど、間口が広かったこと、特にearth Music & EcologyやWonderRocketなどのブランドがそのテイストを取り入れていたため、一時は森ガール風な服が世に蔓延りました。これは、それまで隆盛を誇っていたアメカジベースのファストファッション、GAPやUNICLOに対する、一種のアンチマーケティングだったのかと私は思っていますが。

 つまり、かわいいフリフリが流行れば、UNICLOファッションは見向きもされなくなります。この森ガールの頃にUNICLOの売上が若干伸び悩んでいたのも事実で、森ガールがリンネルに流れてファストファッションに統合されてくると、またUNICLOが活気付いて、フリフリは消えていきます。

 前置きが長くなりましたが(前置きなのか!)、ロリィタファッションとは全く違う流れと思いつつも、やっぱり少なからず影響を受けている側面もありますね。クラシカルロリィタの流れは、この森ガールのムーブメントの影響をいい意味で取り入れているように私は思います。アースカラー、特に革製品についてはスチームパンクと双璧ですよね。そもそも蒸気機関と言えば開拓時代のアメリカこそ、その大舞台です。ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」も、当時の蒸気機関車をインスピレーションにしたという話もありますね。まさにスチームですよ。

 そう考えると、世の中の流行と張り合い、対抗し競い合いながら、ロリィタファッションも作られてきたように思うのです。PINK HOUSEがなければ、今のデコロリは無かったかも知れません。差別化が独自性の原動力だったのは、疑う余地もないでしょう。PINK HOUSEMILKもロリィタブランドも、今にしてみればアンチマーケティングを展開していたと言えるのかも知れません。

 クラロリをカジュアルダウンすれば、axes femmeとは見分けがつかなくなるでしょう。スチームパンクも一歩間違えれば、森ガールになりそうな気もします。デコロリでスケートをしていたら、友達に「昔PINK HOUSEとかあったよねー」と言われました。細かいことを抜きにすれば、その気持ちは痛・い・ほ・ど・!わかります(笑)。話題としては共通項なので、思わず当時の話に花を咲かせるわけですが、それはそれで楽しいですし、ロリィタに対する理解にも及ぶものですから、私としてはむしろありがたく思うことでもあります。

 一般人にとっては、PINK HOUSEもロリィタも同じです。何が違うのかは、そのファッションに付帯する文化や、着ている人達のカテゴリーそのものでしょう。若者のファッションという定義を破るには、年齢の制約を超えるべきですね。歳を重ねても楽しめるなら、それだけ広く世に受け入れられるでしょう。親子でロリィタも微笑ましいですし、妖艶なゴスロリも優雅なクラロリも、あまり歳を意識せずに楽しめます。そんな柔軟性が浸透しつつあるロリィタファッションですから、たとえPINK HOUSEと言われても悪い気はしませんし、むしろわかりやすい解釈かと、私には思うのです。

 ロリィタのカテゴリーがいくら増えても、ロリィタの伝統的なスタイルがそう簡単に滅びることもありません。老舗のブランドが長年築いてきたファッションスタイルです。ロリィタファッションが色々なスタイルを取り込めるのも、堅固な基本があるからこそです。その基本さえ守れば、誰でもロリィタになれます。そういう気持ちと、コテロリ・痛ロリという解釈が相反するものだと私は思うわけです。ご理解頂けますでしょうか。

 
 

 

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