ロリィタファッションにふさわしい音楽といえば。
色々なカテゴリーにはバックボーンにサブカルが存在し、パンクロリィタにはパンクロックですし、ゴスロリにはビジュアル系です。ではそれ以外は? クラシカルロリィタならもう何をさておいても、クラシックに限ります。スイートロリータも基本的には、この路線がふさわしいかと思います。
さてクラシックと一口に言っても多様ですが、私が断然お勧めしたいのは、バロックから古典派までです。ロマン派以降は王侯貴族の没落とともに台頭する市民革命の影響が強くなります。やっぱりセレブのたしなみだった、宮廷で奏でられた室内音楽が断然お勧めです。バロックの室内音楽というと難解な印象をもたれるかもですが、そんなことはありません。当時は繰り返し同じ曲を使いまわすことのない時代ですし、むしろ、メロディアスで親しみのある曲が好まれました。パッヘルベルのカノン、バッハのアリア(G線上の)、ヘンデルのラルゴ(オンブラ・マイ・フ)などは、誰しも聴いたことがあるでしょう。以下、カテゴリーに分けて曲を探ってみます。
●スイートロリィタ向きのクラシック
スイートロリィタなら、バッハやモーツァルトの鍵盤曲で、長調の曲が甘々でいいと思います。単純明快な明るさの曲が多いので、お茶を楽しみながら聴くには丁度いいですね。バッハでしたらインベンションとシンフォニアがスイートです。モーツァルトならピアノソナタ K.545ハ長調など有名ですね。その他、フルートとハープのための協奏曲K.299ハ長調、ホルン協奏曲、晩年の作ですがクラリネット協奏曲K.622などもスイートです。単なる私の食わず嫌いなんですが、ロマン派の方がメロディアスな曲は多いはずです。でも、スイートなメロディはロマン派には少なくて、古典以前の方が断然甘々な気がしています。だって、サロン音楽ですよ? コレッリやパッヘルベルなら、宮廷の雰囲気をそのまんま持ってこれます。まさにミルクとバニラなんですよね~♪
●クラシカルロリィタ向きのクラシック
クラシカルでもやっぱり、ロマン派以降はどうにも軽すぎる気が、個人的にはしています。クラシカルロリィタなら、ちょっと高尚なバッハのフーガなど如何でしょう。よく知られた小フーガBWV578もいいですが、BWV1079「音楽の捧げもの」が私は大好きです。モーツァルトの晩年の交響曲なども、心にぐっと来るような深さと重みがあります。交響曲38番K.504プラハとかいいですね。コレッリの合奏協奏曲などは親しみやすいと思います。なかなか難しいところですが、バロックの標題音楽といえば、ヴィヴァルディの四季をおいて他にはありませんね。その他、クラシカルという観点で、古典の中の古典というのは如何でしょう。例えば、プロコフィエフの交響曲第1番「古典的」Op.25とか、グリーグの「ホルベルク組曲」Op.40は、その当時にして「古い様式」で作曲された曲です。つまり、クラシックの中のクラシックというわけです。とってもクラシカルでしょ?
●ゴシックロリィタ向きのクラシック
あえてゴスロリ向きな曲といえば、バッハのミサ曲ですね。多少難解ですが、ヘビメタの様式美の土台でもあり、ふさわしいかと思います。わかりやすいところでは、有名なモーツァルトのレクイエムK.626などはゴスロリかなと個人的に。クラロリの項でご紹介したバッハのBWV1079「音楽の捧げもの」も、フリードリヒ大王の主題が謎めいていて、いいかも知れません。フーガの技法BWV1080ともなると、人間の感性を通り越した究極の様式美です。モーツァルトの短調、特にト短調の曲は宿命の調性、父の死あるいは自身の死の影響が色濃いとされています。退廃的な曲としてはその辺りがお勧めでしょう。死生観という観点では、遺作にこだわるというのも、興味深いかと思います。
●パンクロリィタ向きのクラシック
すみません、これだけはどうにも思いつきませんでした。悪しからず(笑)
●スチームパンクロリィタ向きのクラシック
スチームパンクの場合は前衛的な曲が似合うはずですので、残念ながらバロックや古典派ですと違和感を感じます。蒸気機関が最も隆盛を誇っていた時代なら、ロマン派の代表作、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」Op.95でしょう。アメリカの民族音楽からインスピレーションを得て、故郷ボヘミアの民族音楽を主題に作曲されたものですが、実はドヴォルザークは鉄道マニアだったことが知られています。当時の鉄道は蒸気機関車で、この「新世界より」の特に第4楽章のイントロが、蒸気機関車の発車を連想させるといわれています。確かにそう言われて聴いてみると、大きな機関車がシュッシュッと音を立てて段々と速度を上げていくようにも聴こえてきます。
前衛的なスチームパンクなら、現代音楽的なカテゴリーの曲がふさわしいかも知れません。ちょっと異質かもですが、ショスタコーヴィチの交響曲第5番「革命」Op.47は興味深いです。作曲当時のショスタコーヴィチは、スターリン政権下のソ連にあって、体制に批判的な作曲家として「粛清」されかねない状況にありました。その彼を救ったのがこの作品です。初演では大喝采を浴び、当の政治中枢もこの作品を絶賛したのですが、実はこの作品。体制を批判する数々の暗号が仕込まれているといわれています。第4楽章で引用されている「カルメン」の元の歌詞が「だまされるな」だそうです。本人に聞ければいいのですが、最早想像を巡らせるしかありません。いずれにしても、そんなアーティストとしての前衛的な反骨精神や体制批判など、実にスチームパンクな作曲家ではありませんか?
久石譲の風の谷のナウシカや天空の城ラピュタも、スチームパンクな路線にあるでしょうか。でもアニメとなるとクラシックという定義から外れてしまいます。スチームパンクは仮想世界や近未来だったりもするので、そもそもふさわしいクラシック曲など存在しないのかも知れませんね。
この項ではクラシック音楽に焦点を合わせてみましたが、ジャズやそれ以外の音楽もカテゴライズすると、面白いかも知れませんね。 |