Kunadonic ロリータファッション徒然草

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ロリィタファッションと異性装

 
 

 ロリィタファッションは異性装に寛容です。というか初期のロリィタは異性装こそアイコンでした。言わずと知れたmana様、下妻物語の作者・嶽本野ばらさんの存在は強烈でした。正しくロリィタを代表するメディアリーダーで、それに憧れた男女を問わない多くの人がロリィタを愛するようになりました。言ってみれば、ロリィタはこうした異性装の文化が色濃い特異なファッションで、性別を問わず楽しめるファッションの代表格、だったのです。過去のゴシック&ロリータバイブルでは、必ずお二方のご尊顔を拝めました。その後、野ばらさんがフェードアウトするに従い、表立った異性装の映像は徐々に少なくなってきます。最終的にmana様も誌面からいなくなりました。

 異性装としてのロリィタファッションは、男装も女装も根強い人気があります。パンツスタイルやジャケット、シルクハットなどの男装品も数多く、性別の枠を超えてカップルを楽しむロリィタさんもおられます。そんな楽しみ方もロリィタならではといえるでしょう。

 女装に関しては、mana様と野ばらさんの影響でロリィタを楽しむようになったというより、そもそも女装が好きだったというパターンの方が多いように感じますが、如何でしょうか。最近では異性装が一般化したコスプレからの流入が多く、写真撮影など大歓迎で、しかもコスプレで鍛えられた美貌を武器に華麗にロリィタを着こなす女装ロリィタさんが増えたように思います。それ以前は、純粋にロリィタ・かわいいお洋服が好きでロリィタを嗜むようになったという、ピュアなファンが多いでしょうか。女装がしたかったというより、心からロリィタを楽しみたいと思うファンが大半だったかという気がしています。女装という枠にとらわれず、中性的な装いに拘る達人ロリィタさんもいらっしゃいます。いずれにしても、女装ロリィタさんは全然珍しい存在ではありませんでした。

 ただこれも、都心部だけの話でしょう。そもそも女性でさえロリィタを着るのが躊躇われる地方では、カジュアル女装などでも難しいものでロリィタなんで以ての外です。そうした土地の事情では、女装ロリィタなんて想像もできないかもしれませんね。でも少なからず、地方の女装ロリィタさんもいなくはないようで、長時間をかけて都心に通う熱心な方もいると聞いたことはあります。

 女装ロリィタさんにも色々な方がおられます。カジュアルに時々着て楽しむだけの方、お茶会やロリデを中心に着ている方、普段着として日常的に着こなしている方など、本当に様々です。さらに、ロリィタだけでなくガーリーファッション、先述の通りコスプレをされている方も最近増えました。女装文化そのものがメジャーになり、そうしたファッションスタイルも特殊ながら、一般化してきているのだとも思えます。そんな女装趣味のアイコンとしてもロリィタ人気は根強いですね。

 男装に関しては言うまでもありませんね。男装というより、皇子ロリィタという方が一般的でしょうか。Alice&the PiratesやMIHO MATSUDAなどがパンツスタイルの皇子ロリィタを古くから提案しています。完全な男性向けのメンズラインも少ないですがあります。

 ここでもう少し突っ込んだお話。セクシャルマイノリティ、性的少数者のお話です。

 まず私自身のことから。

 私はトランスセクシャル、MtF(Male to Female)です。男性に生まれましたが、現在は女性として生活しています。一口に申し上げると以上ですが、遡れば男性として生活していた時期も長く、女装の期間もそれなりです。そうした合間合間でロリィタのみならず、色々な女性ファッションを楽しんでおりました。そんな鱗片を掻い摘んでみると、ただ家の中で着るだけだった頃、外で着替える前提だった頃、人目を忍んで外出した頃と、その時々の状況に応じて女装のし方そのものが異なりました。これは、女装ロリィタさんそれぞれの違いとも同じですね。小学校での友達は元々少なく、低学年では女の子の友達と遊んだり、高学年ではインドア傾向でした。中学では虐められ、それに抗う形で自身の女性性を否定したりもしましたが、高校の頃に父を亡くし、自我が崩壊し登校拒否になりました。社会に出てから、機会がある度に女装をするようになり、徐々にエスカレートして……以下略、今に至ります。

 私は幼少の頃から女の子の格好いえ、女の子になることに憧れていました。大人になってロリィタファッションに出会い、ロリィタは幼い少女の夢や、童話の主人公などへの憧れで繰り広げられた世界観ですから、私にとってもそれは夢のような世界でした。むしろ幼少時代は女の子として過ごす事が叶わなかった、空白の期間でもあります。その虚しさを埋めていくように、ロリィタに傾倒していったのです。ただ現実に全てが叶うはずもなく、それは途方もない時間と手間暇を経て、少しずつ、切り開いてきたのでした。

 皆さんの心情や事情は様々です。MtFの場合、私のようなカミングアウト(公言)している方もいらっしゃいますが、大半は公言せずひっそりと暮らしておられる方ばかりです。ましてロリィタは激目立ちで、ひっそり人知れず暮らすには全く向いていません。憧れはあったにしても、MtFのロリィタさんは相当少ないと思われます。幸い私は同じ属性のロリ友さんと出会い親しくなれましたが、それこそ稀有なことなのかもしれません。
 同様に、FtM(Female to Male)の方もいらっしゃいます。絶対数はわかりませんが、やはり異性装に寛容だったロリィタですから、そうしたロリィタさんも確かにいらっしゃいます。事情もまた同様で、その辺りは本当に人それぞれです。

 ロリィタ界隈でセクシャルマイノリティを公言するのにも勇気が必要でしたが、通常カミングアウトは社会や周囲と「戦う」ことを宣言するほど重いものです。その実態は、差別と偏見です。多くのトランスさんが埋没を望むのは、この不毛で不用意な争いを避けるためです。戦うことを選び、自ら自分の立ち位置を確保していこうとすること、それがカミングアウトかと私は認識しています。公言して楽になるなら、皆公言しています。そうでないのは、その現実が如何に重いかということでもあるのです。幸いにして、ロリィタ界隈は元々異性装に寛容という基盤がありました。性別を超えて楽しむ文化が根付いていて、性的少数者に対しても少なからず理解がありました。本当に有り難かったです。もちろん、全ての人がそうだとは限りませんが。

 絶対数で言えば、異性装の中でも性的少数者はさらに少ないです。基本的に女装の方々のほとんどは、男性としての性自認をお持ちです。あくまで女装であって、女性ではありません。逆に、手術を済ませ戸籍上の性別を変更された方は、法的にも身体的にもその性別です。そうした方々を絶対に生まれた時の性別で扱わないでください。それが、いわば差別なのです。

 女装男装、いずれもロリィタファッションとは切っても切れない文化です。ただ、全ての人がそれを認めているわけでもありません。異性装が嫌いなロリィタさんももちろんいらっしゃいます。そうした方々のアイデンティティを否定するつもりもありませんが、そうしたコミュニティもあり、お互いがお互いを認め合う必要性はあるでしょう。理解する必要はありません。そうした方々がいるという配慮、それだけでいいと思います。

 最後に、これだけは言わせて下さい。

 本当に残念ながら、女装を隠れ蓑にして悪い事を考える男性ロリィタさんは、存在します。注意することとして、他のロリィタさんと仲良くしているか、そうした方々の話などは一応確認した方がいいと思います。どんな女装ロリィタさんか人伝で聞いておけば安心でしょう。長年沢山のロリ友さん達とのお付き合いのあるベテラン女装ロリィタさんの多くは、変な言い方ですが本当に「紳士」です。そうでない人には、少し用心して接する位で丁度いいかなと、私は考えています。
 私自身もまた例外ではないと思います。異性装に寛容な、素敵なファッションを末永く楽しむためには、欠かせないことではないかと。

 
 

 

 

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Access Date/Time 24/10/10 23:01

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