ここ5年の大きな変化といえば、海外のロリィタさんが急激に増えているということですね。際立っているのはやっぱり中国。中国の経済成長に伴う富裕層が、日本のデパートで爆買いする光景がしばらく続きました。ロリィタのお店も例外でなく、ロリィタ服を大量に買い付けて本国に持って帰るという状況が顕著でした。日本のサブカルが好きな本国の人達に頼まれてか、転売するのかはわかりませんが、いずれにしてもそうしたグローバルなユーザー層を無視できなくなっているのは、間違いありません。日本のマンガ・ジャパニメーションの世界的な普及と、ほぼ同じ道を辿っています。
それでも、ロリィタがブームだったといっても、日本人女性に広く普及した訳でなかったのと同じですね。日本好きな海外の女の子が、みんなロリィタになっている訳でもありません。日本よりも服装が自由で、比較的受け入れやすい環境が整っているとはいえ、高価で入手が若干困難なことは日本と同じか、それ以上でしょう。海を越えて日本に来るだけでも大変なのですから。そのパワーたるや、恐るべしといったところです。
ことロリィタファッションについては、青木美沙子さんを代表とするkawaii大使(Ambassador Communicates)や、外務省のポップカルチャー発信が功を奏したようですね。日本ロリータ協会は最早、世界ロリータ協会になっているともいわれています。日本のロリィタブームは沈静化しましたが、世界的には日本のポップカルチャーの一つとして、コスプレと並ぶデファクトスタンダードになっています。今や日本のロリィタに憧れてわざわざ日本の原宿やロリィタショップにやってくる若い女の子が、下手をすると日本人よりも多いのです。
ロリィタファッションが日本のサブカルを代表するファッションにまで成長したのは喜ばしいことですが、一方で残念なことも多数あります。
まず一つは盗作。
日本のコスプレ衣装を手がけ始めた海外、特に中国の業者が、ブームに乗じてロリィタファッションも製作するようになった頃から、盗作の問題も同時に発生しました。著作権の概念が乏しい中国では以前からコピー商品が豊富でしたが、ロリィタも全く同じ手法に取り込まれ、安価で質の悪い商品がネットで出回るようになりました。質が悪いだけならまだしも、ロリィタブランドをよく知らない初心者が安易に手を出して、悲しい思いをしたとも耳にしています。盗作は恥ずべき行為です。しかしお金を払ってしまえばまず取り返しがつきません。ここでは名指しを控えておきますが、「ロリィタ盗作」で検索すれば情報がしっかり出てきます。よく目を通して、間違っても絶対に買うことのないように、注意してください。
それから大量買付けによる問題。
ロリィタメゾンで予約や抽選の列ができると、その列に並ぶ人達から異国の言葉が飛び交っています。意味はわからなくとも、すぐ何処の国かはわかります。そうした海外のロリィタファンが列に並んで購入すること自体は、何ら問題ありません。
ショックだったのは、「一人一つ」と言われて並んだはずなのに、その翌日ヤフオクで同じユーザーが複数の出品をしていました。つまり、組織的に購入していたということです。そしてその桁違いの値段を見てびっくり。それも商売、そう言ってしまえばそれまでですが、たった一つの限定品を手に入れたくて長時間一人で並んでいた自分が、馬鹿らしく、虚しくなってしまいました。
良くも悪くもロリィタは、グローバルな世界にどんどん広がりつつあります。非道な海外の方々によって、健全なロリィタファッションが汚されることを、私は恐れています。私が何度も申し上げている通り、ロリィタはただの衣装ではありません。それを支える「ロリィタの心意気」があってこその、ロリィタです。日本のポップカルチャーを代表するファッションなら、その心も礼儀正しい日本人の心と共に、広まって欲しいものです。私の求めるロリィタの社会性は、特に海外のロリィタさんにとっても必要なのではないかと、僭越ながら思う次第です。 |