言葉遣いほど、その人の品格や素性を明確にあからさまにする要素もないでしょう。服装が如何に豪華であったとしても、語彙の貧しさ、ボキャブラリーが乏しいことは、相手が上手であればあるほど悟られるものです。これは、田舎育ちだとか、方言が抜けないとか、そんな表面的なことではないですね。「超~・ヤバい・キモい・ウザい」はよく耳にしますが、品がないというより言葉の表現の乏しさに一抹の寂しさを覚えます。
ロリィタファッションは、お話してきた通り多様なカテゴリーがあり、カテゴリー内にも微妙な差異が認められます。個人の表現はそれこそ十人十色です。それだけの違いを、はたしてそんな単純な言葉で、うまく表現できるでしょうか。
何も、難しい単語を羅列すればいいというものではありませんが、例えば美しいという意味の言葉にさえ、「綺麗・可憐・耽美・華美・端麗・優麗・秀麗・艶美」など、数多くの類義語があって、それぞれ美しさを表す言葉でも意味が違ってきます。そうした言葉の複雑さは、ロリィタファッションを細かく表現する上でも役に立ちます。スイートロリィタなら甘美とか、クラシカルロリィタなら絢爛とか、ゴスロリなら妖艶とか。むしろ、こうした言葉を使って表現できたなら、豪華なロリィタファッションをより華やかに着こなせ、表現できるとも、私は思っています。
はっきり言って、苦労して手に入れて、手間隙かけて頑張って着こなしているそれを、右から左まで「カワイイ」の一言でひとまとめにされて……。もうちょっと別の表現はないんですか? と言いたくなるのをグッと堪えて。ロリィタの方々には、自身のこだわりが極限の領域にまで達した究極的な方も多くいらっしゃいます。それにふさわしい言葉がもし交わせたなら、ロリィタファッションもより一層華やぐと私は思うのですが。色んな意味で苦労して作り上げた自身の美意識を、カワイイの一言で纏められてもねえ…。まあ別に、それでも悪い気はしませんが、気の利いたエッセンスのような単語がちょっと盛り込まれていたら、言われた側もその言葉の味付けに思わず、舌鼓を打つものではないでしょうか。
日々、語彙を身につけるというのもなかなか難しいことですが、少なくとも品がないと思われるような言葉遣いは、ロリィタなら当然避けるべきでしょう。言葉のだらしなさや汚さは、服装のそれよりも品格を落とします。何せ、中身の人間の問題ですから。服と違い、安易に着飾れないものだからこそ。
余談ですが、私は「ら抜き」が駄目なんです。今は既に少数派だとは認識していますが。
ら抜きはともかく、カタカナの横文字ばかり並べるのがいいとも思えませんし、意味の通じない難しい単語ばかりを使えば意思疎通できません。そんなものよりもまず絶対心得るべきは、正しい敬語でしょう。これは社会生活上でも必ず役に立ち、日本人なら絶対に必要不可欠な言葉です。言葉が丁寧で、尊敬と謙譲を言葉にしっかり盛り込める人は、どんな場面においても恥をかかず、相手からも尊重されます。言い換えれば、その逆が如何に恐ろしいか。
すなわち、知らず識らずのうちに大恥をかき、相手からも蔑まされるということです。ロリィタ服が完璧であればあるほど、その粗が際立ってしまいます。言葉遣いも、服飾と同じです。可愛らしい華やかな服には、可憐で端麗な言葉遣いがふさわしいはずです。下品な言葉遣いは、恥であると私は心得ます。 |